vol.18
- 家庭学習のすすめ
- 財団法人 図書教材研究センター理事長
- 筑波大学名誉教授
- 辰野 千壽
家庭学習の役割
今日、学力向上が社会問題となり、その対策として授業の改善、授業力の向上など、教師の指導力への期待が高まっている。もちろん、これは大事であるが、授業の効果を上げるためには、家庭においても予習・復習などを効果的に行うことが必要である。この家庭学習の一助として学校では宿題を出しているが、宿題には、次のねらい、役割がある。①学校で学んだ知識・技能を復習させ、その定着を図る。②新しい内容について予習させ、学校での学習効果を高める。③学校で学んだ知識・技能を実際の生活で応用し、発展させる。④学校ではできないものを家庭で学習させる(例えば、動植物の継続的観察)。⑤自発的・自主的に学習するよい習慣をつける。
宿題のこのねらいを実現するためには、家庭で何を、何のために、どのように勉強するかを具体的に考えさせ、計画的に行うように指導することが大事である。
家庭学習と教材
家庭学習を効果的に行うためには、家庭の協力が大事であるが、学習に必要な参考書や問題集、ワークブックなどの教材を整えることが必要である。勉強は何と言っても教科書が中心になるが、その学習を補充し、発展させるためには補助教材が必要である。参考書には、わからないところを調べることに役立つ総合解説型、要点を理解したり記憶したりするのに役立つ要点整理型、実力を試したり、応用力をつけるのに役立つ問題練習型(ワークブック、ドリル帳、テストブックなど)があり、それぞれ工夫が凝らされている。
しかし、どんなに優れた参考書が用意されても、それを活用しなければ、宝のもちぐされである。効果的に用いるためには、次の点に注意する。①教科書と並行させる。②一冊を完全にマスターする。③練習問題は必ず行う。できない問題は後で必ずもう一度やる。できない問題ができるようになって初めて力がついたことになる。
なお、家庭学習の効果を上げるには、計画を立て、自ら進んで勉強し、進歩の状況を自ら点検、評価し、勉強の仕方を調整することが大事であるが、さらにそれを続ける我慢強さ・根気強さ(自己統制力)が必要である。
〜図書教材新報vol.18(平成18年10月発行)巻頭言より〜