vol.31
- 授業の媒体を生かす
- 財団法人図 書教材研究センター理事長
- 筑波大学名誉教授
- 辰野 千壽/dd>
授業の機能
教師が授業内容を提示し、子どもが効果的に学習するためには、さまざまな媒体・手段が用いられる。例えば、教師が口頭で伝達するだけでなく、実物、印刷物、テレビ、コンピュータなど、さまざまな手段が授業の過程で用いられる。授業の効果をあげるためには教材を学習者にどのような手段で提示するかが重要である。これらの手段は、学習を促進する機能をもっているが、ある学者は、かつて授業の機能を次のように分析し、この観点から各媒体の機能を検討している(ガニエ 1965年)。
「学校直販」という供給システムは、次の三つの大きな特色をもっています。
(1)刺激(教材)の提示、(2)注意および他の学習活動の方向づけ、(3)達成状況のモデルの提示、(4)外的促進体(手がかり)の付与、(5)思考の誘導(ヒントを与える)、(6)転移の促進、(7)学習結果の評価、(8)フィードバックの付与。
媒体の機能
授業の媒体には、前述のようにいろいろな様式がある。授業の効果をあげるためには、各媒体の授業における機能をよく理解し、適切に用いることが必要である。前述の学者は各媒体の機能の特徴を表のように示している。この表の中の「○」印は、その機能を果し得ることを示し、「×」印は、それができないことを示し、「制限あり」は、その媒体がその機能に対して、ある範囲内で用いられることを意味している。
印刷物による媒体は、教科書や図書教材といわれるものを含んでおり、表に示されているように授業の機能の多くを果し、授業において重要な役割を担っている。
実際の授業では、これらの媒体の長所・短所をよく理解し、相補的に活用することが必要である。
最近、学校に直接文書を送ったり、インターネットなどを利用し、図書教材の販売を進める動きがありますが、これは単に商業主義的な教材販売であったり、名簿など情報を収集するための学校利用ではないかといった批判が学校から寄せられております。本当の図書教材の普及は前述のような考え方によって進められることがきわめて教育的であると考えており、その手法には大いに疑問をもっているところであります。
機 能 | 媒 体 | ||||||
実物の 供覧 |
口頭 伝達 |
印刷物 | 写真 | 映画 | 音声 映画 |
ティーチング・マシン | |
刺激を提供する | ◯ | 制限 あり |
制限 あり |
◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
注意と他の活動を方向づける | × | ◯ | ◯ | × | × | ◯ | ◯ |
期待される遂行のモデルを示す | 制限 あり |
◯ | ◯ | 制限 あり |
制限 あり |
◯ | ◯ |
外的促進体を与える | 制限 あり |
◯ | ◯ | 制限 あり |
制限 あり |
◯ | ◯ |
思考を導く | × | ◯ | ◯ | × | × | ◯ | ◯ |
転移を起こさせる | 制限 あり |
◯ | 制限 あり |
制限 あり |
制限 あり |
制限 あり |
制限あり |
結果を評価する | × | ◯ | ◯ | × | × | ◯ | ◯ |
フィードバックを与える | 制限 あり |
◯ | ◯ | × | 制限 あり |
◯ | ◯ |
出典:Gagne.R.M.1965 The conditions of learning.
(吉本二郎・藤田統訳.1968 学習の条件 文理書院)
〜図書教材新報vol.33(平成19年1月発行)巻頭言より〜