vol.32

バランスをとった指導要領
社団法人 日本図書教材協会会長
菱村 幸彦

遅れていた指導要領の改訂もようやく3月までには公示されることとなりました。ここ10年来、かまびすしかった「ゆとり教育」批判に対し、ひとまず結末をつけることになるわけです。

改訂の方針は、現行指導要領の理念である「生きる力」をそのまま維持しつつ、批判の強かった学力問題について、授業時数の増加と教育内容の充実を図り、「確かな学力」の定着を目指すとしています。ゆとり批判派からみれば、「中途半端な改訂」(西村和雄・京都大)と不満があるのでしょうが、中教審としては、バランスをとった指導要領と言うことになりましょう。

今年は新しい指導要領に基づく教材開発に向けて全力を挙げて取り組む必要があります。

 

問題場面検査を生かす
財団法人 図書教材研究センター理事長
辰野 千壽

今日、学力検査では、特に知識の有無だけでなく、知識の応用・活用を調べることが求められ、客観的検査よりも記述式検査を重視するようになった。しかし、記述式検査、特に論文体検査に対する批判から客観的検査に移行した経緯を思うと、安易に記述式検査に戻ることもできない。そこで、すでに提唱されている問題場面検査の再検討もひとつの方法である。

この検査は学習した各種の資料を用いて、子どもが授業で経験したことのない新しい問題場面を作るので、高次の思考力、創造力、問題解決力をみるのに適する。しかし、この検査も記述式にすると、やはり採点の客観性が問題になるので客観的問題場面検査も用いられている。これからはこの検査の客観性保持を工夫して活用することが必要である。

 

日本の教育のため学校直販を守れ
全国図書教材販売協議会会長
清水 厚実

平成20年は、教育基本法をはじめ教育三法の改正を受け、新しい学習指導要領が発表され、それに基づく教科書や図書教材作りが始まるきわめて重要な年であります。

図書教材業界としては、児童・生徒に、「生きる力」と「確かな学力」をつけさせるため、新しい教育課程に基づく有益適切な図書教材を発行し、教育界のニーズに応えなければならないと決意を新たにしているところであります。

一方、学校直販という、きわめて教育的であり、経済的である供給システムにより学校に図書教材を供給し、我が国の教育の進歩と発展に貢献してきた業界としてこの体制をしっかり守り、発展させ、引き続き学校教育の伸展に寄与しなければならないと考えています。

〜図書教材新報vol.32(平成19年12月発行)巻頭言より〜