vol.36
- 新学習指導要領の告示と教材
- 社団法人 日本図書教材協会理事
- 東京家政学院中学・高等学校校長
- 佐野 金吾
学力問題が話題になるなかで新しい学習指導要領が告示されたが、今回の改訂は教育基本法並びに学校教育法の改正をふまえて行われた。法改正に当たって教育の目標・義務教育の目標が規定され、学力の重要な要素として①基礎的・基本的な知識・技能の習得、②知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力、③学習意欲の三つを挙げている。
このことを受けて新しい学習指導要領では学力については「総則」で具体的に触れており、現行の学習指導要領に比べて読み取りやすくなっている。
ここ2回の学習指導要領の改訂は学校週5日制の実施、授業時数の縮減と教育内容の厳選、観点別学習状況評価における絶対評価などと学校現場での取組みを根本的に見直すことが求められ、教員にとっては大きな負担となっていた。
しかし、今回の改訂に関わって文部科学省は新学習指導要領について大規模な広報活動を行い、学校関係者のみならず一般社会にも改訂の趣旨の徹底を図るとのことである。また、新学習指導要領実施本部をたちあげ、教職員の配置や道徳等の教材の整備、長期間の体験活動に対する予算措置などへの働きかけに関わるようである。これまでの改訂時にはみられない動きであって学校現場では大いに期待している。やはり学校教育を根本から見直そうとするならば、それなりの条件整備が必要となろう。平成10年の改訂は、教育課程の仕組みや教育内容、学習評価などについて従来にない大きな変革であったため学校現場では戸惑うことが多かった。特に「総合的な学習の時間」については人材や予算の措置が十分ではなかった。しかし、今回の改訂では新しい学習指導要領の取り組みに向けた環境条件の整備が進められるようなので学校現場としては受け入れやすいと思われる。
さて、学力問題に関しては、今回の改訂においても子どもたちに「確かな学力」をはぐくむことが重視されているが、「確かな学力」を子どもたち一人ひとりに身につけさせるためには教師による授業の工夫改善のみでは難しい。「総則」には「家庭との連携を図りながら、児童生徒の学習習慣が確立するよう配慮しなければならない。」とあるように、子どもたちの学びについて新たな取り組みを学校教育に求めている。子どもたちの学校を離れた学びの在り方を具体的に示したことに注目したい。この指摘は、家庭における保護者の指導の在り方が問われる課題ではあるが、教師としては授業の工夫改善とともに子どもたちの家庭における学習を促す適切な教材の開発に取り組むことになる。教育委員会をはじめとして研究者並びに関係者の理解と協力を強く求めたい。
〜図書教材新報vol.36(平成19年4月発行)巻頭言より〜