vol.38
- いよいよ英語教育が始まる
- 社団法人 日本図書教材協会会長
- 菱村 幸彦
新学習指導要領で小学校5年と6年で英語教育を週一時間行うことが定められた。正式には平成23年度からだが、学校の判断で、移行措置として実施できるところは、来年度からスタートする。
小学校の英語教育の導入に当たっては、その是非をめぐって賛否が分かれた。英語に時間を費やすぐらいなら、もっと国語教育をしっかりやるべきだといった議論は根強い。どちらかといえば、私も国語重視派に与するが、英語力を身に付けた人材の育成が国家的な課題であるという認識は持っている。正式に導入が決まった以上、小学校の英語教育は、確かな効果を上げるよう育ってほしい。
今日、英語を公用語ないし準公用語等とする国は、54か国に及び、英語人口は21億人に達するという。それでなくても、観光であれ、商用であれ、公用であれ、英語は広く国際語として使われている。特にインターネットの世界では、英語で発信し受信することが当たり前になっている。これからの社会では英語が不可欠のツールとなることは間違いない。
こうした状況の中で、各国は、国家戦略として、英語教育の早期開始に取り組んでいる。例えば、ドイツは以前から小学校段階で英語教育を導入している。フランスは昨年から小学校段階で英語教育を必修とした。アジアでも、韓国は10年前に小学校の英語教育を必修にしている。近年、中国や台湾なども小学生から英語を教えている。日本はTOEFLの成績がアジアで下から2番目(最低は北朝鮮)という。こんな不名誉な成績は早急に改善しなければならない。
小学校に英語教育を導入する場合、二つ課題がある。一つは、誰が担当するかである。学習指導要領は、学級担任の教師または外国語活動を担当する教師が行うとし、授業ではネイティブ・スピーカーや地域の英語に堪能な人々の協力を得るとしている。
学級担任が担当するとなると、学級担任の研修が必要となる。文部科学省は、指導者養成研修をスタートしているが、全国の小学校教師に英語教育研修を行うのは容易ではない。外部人材の確保については、地域により人材に偏りがあることが懸念される。いずれにしても、これには予算措置が欠かせない。
もう一つの課題は、教材をどうするかである。文部科学省は、来年度からの移行措置に向けて、小学校の英語教材として「英語ノート」(試作版)を公表した。「英語ノート」の内容は、「聞く」「話す」といったコミュニケーション活動が中心で、CD付きのワークブック形式となっている。具体的な活動を行う際に子どもたちに提示する絵カードなども付いている。しかし、小学校の英語教育を充実するために、「英語ノート」で十分なのかどうか。小学校における英語教育の教材開発は未開拓分野である。その充実は今後の重要な課題となろう。
〜図書教材新報vol.38(平成19年6月発行)巻頭言より〜