vol.47

メタ認知を活かす
財団法人 図書教材研究センター理事長
筑波大学名誉教授
辰野 千壽
 

  1. メタ認知とは
    実際の学習では、読む、書く、計算する、記憶する、考える、問題を解決する、などの知的活動(認知過程)と、その効果を高めるために、自ら計画し、その遂行をチェックし、計画どおりにできたかを評価する活動(管理、制御)とを行っている。この自分の学習と認知の過程及びその制御について知ることをメタ認知といい、その知識に基づいて自分の学習や認知の過程を管理し、制御する活動をメタ認知活動という。このメタ認知の知識をもつほど学習材料をうまく処理できる。
    今日の学習指導では、自ら学び自ら考える学習を重視しているので、この活動を活かすことが重要である。もちろん、このような活動は、昔から表現は違うが、推敲、反省、見直しなどといって重視されてきたが、近年、認知心理学や情報処理理論の発展に伴い一層強調されるようになった。
  2. メタ認知を高める
    メタ認知活動を活かすと、学力が向上することが示されるにつれ、その活かし方が研究されているが、例えば、次の手順でメタ認知活動を用いると効果があることが示されている。
自分がなすべきことは何かを明確にする。
「よく見よ、よく考えよ」と自ら指示し、自分の行っていることに注意を集中する。
自分の学習に対し「自分は非常によくやっている」と自ら評価し、強化する。
「それはうまくいっている。しかし、もし失敗したら、次にはもっと注意深くやるように」と対処の仕方について考える。

このようなやり方を読解の学習で訓練すると、確かにその成績は向上したという。なお、監視の具体的方略には、自問する、一貫性をチェックする、再読する、言い換える、などの方法がある。
したがって学習指導ではもちろん、教材の作成においても、このメタ認知機能の働きを考え、それを活かす機会や場面を与えるように工夫することが大事である。

〜図書教材新報vol.47(平成21年3月発行)巻頭言より〜