vol.51

若手教員の指導力の向上
社団法人 日本図書教材協会会長
佐野 金吾

今回の学習指導要領の改訂は教育基本法、学校教育法の改正をふまえて行われたものであり、単なる10年毎の改訂と同一には扱えない。今回の改訂は「確かな学力」を基盤とした「生きる力」を育むことをねらいとしている。また、このたびの法改正によって学力観、学習指導観が法によって示されゆとりか学力か≠ニいった無意味な論争は昨今聞かれなくなった。

今年度から新学習指導要領による移行措置によって教育活動が行われているが、多くの学校現場では大きな悩みを抱えている。そのひとつは教師の力量に関する問題である。ここ数年、多くの学校ではキャリアを積んだ教員が退職期を迎え、若手の教員が急速に増えている。キャリアの少ない若手教員に優れた指導力を求めることは難しいとしても、その若手教員をいかに育てるか、学校現場にとって大きな課題である。

大学の教員養成の段階で教科指導や生徒指導に関するカリキュラムは整備されていると思われるが、その実態はどうなっているのだろうか。教員対象の私的な勉強会を20年来行っているが、毎回、教科指導や生徒指導の在り方についての話し合いをしている。会で話題になるのが 大学時代の講座の在り方である。例えば、社会科の教科指導の講座でも地図帳の扱い方に関する講義は皆無とのことである。では学校現場で指導を受ける機会はあるのか、このことに関しても悲観的な状況である。「確かな学力」を育むためには、教員に教科指導、生徒指導に関する基礎・基本を身につけていることが必要であるが、若手教員の指導力の向上を、だれが、どのように行うのか、学校現場にとって大きな課題を抱えている。

文部科学省の教員養成協力者会議では、学校現場のニーズに応じた教員養成カリキュラムについての協議が行われているとのことであるが、是非とも教員養成の段階で教科指導、生徒指導の基礎・基本をきちんと身につけられる講座となるよう願っている。

〜図書教材新報vol.51(平成21年7月発行)巻頭言より〜