vol.52

ものさし こころざし
社団法人 日本図書教材協会理事
東京学芸大学名誉教授
杉山 吉茂

ものの大きさを測るものが「ものさし」なら、心の大きさを測るものは「こころざし」と考えてよいのではないかと書かれていたのを見たことがある。では、「ものさし」に目盛りがあるように、「こころざし」にも目盛りがあるのだろうか。「こころざし」を考えてみると「こころざし」にも、いろいろな目盛りがあるように思われる。

ひとつは、「こころざし」が及ぶ広さが考えられる。自分一人のことだけか、家族、友人にも及ぶものか、学校、会社、地域、日本、世界の人々など、いろいろな広さが考えられる。

また、「こころざし」がもつ時間の長さが考えられる。今日のことか、今週のことか、学期末や学年末のことか、一年先か、十年先か、五十年先、百年先か。今の政治家は、次の選挙のことを考えることが精一杯で、五十年先、百年先のことを考えている人は少ないと言われているが…。

「こころざし」の質の深さ(高さ)も目盛りと考えることができる。自分の欲望を満たすこと、お金や物をたくさんもつこと、権力をもつことや、科学、芸術、哲学等々に貢献することなどなど、などなど…。

他にもまだいろいろ考えられるであろうが、それよりも先に、今の子どもは、どんな「こころざし」をもっているのかが気になる。ひょっとすると「こころざし」などもっていないと言われるかもしれない。「志を立てる」という言葉も久しく聞かない。「こころざし」がなく、目先の学習だけに終わっているとしたら悲しい。

アラゴン(1897〜1982)は「教えるとは、希望を語ること」と言った。足元も大切なので、少人数指導や能力差に応じた指導も大切だが、「こころざし」をもち、夢を実現するために努力する姿を教えることも大切にするべきではないだろうか。そして、日頃の学びが「こころざし」につながるようなものにしたいものである。

ところで、あなたの「こころざし」は?

〜図書教材新報vol.52(平成21年8月発行)巻頭言より〜