vol.58

痛感する外来語解説教材の作成
財団法人図書教材研究センター副理事長
上越教育大学名誉教授
新井 郁男

外来語が生活のなかに氾濫している。最近は、日本語への回帰の傾向もないわけではないが、一般的には意味がわかりにくい語が多いことに変わりはない。このような状況に照らして、国立国語研究所では、外来語176語について日本語への言いかえを提案している。例えば、インフォームドコンセントについては、「納得診療」とか「説明と同意」というような案が出されている。

このように、まだ生活のなかであまり定着度の高くないものについては、わかりやすいように言いかえを工夫していくことが重要と思われるが、定着度が高く、言いかえずに用いるとしても、その発音などは原語と同じではない。外来語をその原語を母語とする人に対して使っても、意味が伝わらないことが多い。そういう意味で、学校では、外来語が教材に使われている場合には、原語の発音や意味などをも合わせて教える必要があるのではないだろうか。

小学校の第一学年から第六学年までの現行の国語教科書に出てくるカタカナ語をすべて洗い出してみた。出版社によってカタカナ語の頻出の度合は同じではないが、いずれにしても、カタカナ語が出てきたときに、適宜に、それに対応する原語との関連、異同などについて、説明をするべきではないだろうか。している教師もいるであろうが、たまたま筆者が観察した授業でそのような場面に遭遇したことはない。

説明をしないどころか、間違ったまま授業が進行していった場面を見たことがある。野球を扱った教材で、クロスプレイという言葉が出てきたときに、その様子についての教師の問いに、ある児童が、野手とランナーの足が塁上で交叉したことだと答えた。教師はどう説明するかと見守っていたが、教師はうなずいたままで、授業は先に進んでしまった。

それ以来、外来語解説教材作成の必要性を痛感している。

〜図書教材新報vol.58(平成22年2月発行)巻頭言より〜