vol.59
- 教師と教材
- 社団法人 日本図書教材協会理事
- 佐野 金吾
新政権では「コンクリートから人へ」を理念として政治の見直しが行われている。しかし、学校教育では「コンクリートも人も」重要である。コンクリート≠ノついては事業仕分けでかなり厳しい状況ではあるが、人≠ノついては来年度以降に教員増の措置が行われるようで期待したい。
小学校も中学校も授業に集中できない、学習に意欲を示さない児童・生徒が増えている。中学生は高校受験に関係ない教科への興味・関心は特に低い。教師は、このような児童・生徒を相手に何とか授業に集中させようと苦労している。最近は授業の補助要員を配置している地教委も増えてはいるが、手のかかる生活指導には専任ではないとなかなか上手くいかない。
新学習指導要領では「確かな学力」を基盤とする「生きる力」を育むことを学校教育の理念としているが、この理念を教育活動で実現するには「教師」と「教材」の質が問題となる。
新学習指導要領による教育活動は移行措置ですでに実践されているが、「確かな学力」を育む授業の工夫と教材の開発に苦労している。この背景として従来から変わらぬ知識・技能伝達型の授業と答えは一つとする教材をあげることができる。学習習慣、読書習慣も身についていない、学習への意欲もなく、提出物にも関心を示さない、このような児童・生徒に対して学習への興味・関心をもたせるには、教師の指導力とともに教材の質が問われる。児童・生徒の自発的な学習を促すことのできる適切な教材があれば、授業も変えることができる。授業が変わらなければ、児童・生徒の学びの質的変化は難しい。教師と教材作成者との一層の連携による児童・生徒の学習の実態に相応した教材の開発を期待したい。
〜図書教材新報vol.59(平成22年3月発行)巻頭言より〜