vol.61

評価情報の共有が必要
社団法人 日本図書教材協会会長
菱村 幸彦

学習評価はどう変わるか。先ごろ公表された中教審の報告書「児童生徒の学習評価の在り方について」は、一部に簡素化に向けた改善を加えているが、基本的に現行の枠組みを変えない方針を示した。ここで報告書の内容に触れる余裕はないが、一つだけ、保護者との関係に言及している点に注目したい。

周知のように、現在の学習評価は、目標に準拠した絶対評価が基本となっている。しかし、保護者が学校に通っていたころは、集団に準拠した相対評価が中心だったから、今の評価法にはなじめないものがあると思われる。

報告書は、4割の保護者が学習評価を肯定的に受け入れているとしながらも、4割の保護者が「評価に先生の主観が入っているのではないか」とか「学級や学年集団の中の位置づけが分からない」といった不満や不安を持っていると指摘し、学習評価についてもっと保護者の理解を得るように工夫すべきだと提言している。

提言の一つは、評価情報の積極的提供である。保護者には、絶対評価といい相対評価といい、それがどのような意味を持っているか分かりにくい。また、観点別評価で「知識・理解」や「技能」の評価は納得できても、「思考・判断」や「関心・意欲」となると、どうやって評価するのか不安を持つ。で、報告書は、保護者に対して、評価規準について事前に説明したり、評価結果の説明を丁寧にするなど、評価に関する情報をより積極的に提供すべきだとしている。

もう一つは、通知表の改善である。報告書は、通知表を学校から児童生徒の学習状況を伝えるだけでなく、保護者や児童生徒の側からも情報を伝えられるものにすべきだと提言している。つまり、通知表を学校と家庭が学習情報を共有する手段となるようにする必要があるというのだ。

確かに学習評価の信頼性を確保するには、保護者の理解の促進が欠かせない。

〜図書教材新報vol.61(平成22年5月発行)巻頭言より〜