vol.64
- 教具の教材化
- 財団法人図書教材研究センター副理事長
- 上越教育大学名誉教授
- 新井 郁男
一般に、教授学習活動において教育内容を児童生徒に理解させるための材料を「教材」と呼んでいる。それに対して、「教具」は教授学習活動を展開するための補助手段であると理解されている。教材は教育内容を具現しているのに対して、教具は物的手段のことで、内容には直接的には関わらないと考えられている。
しかし、文部科学省で制定している「教材基準」における教材は、一般に考えられている教材を提示するための品目についての基準で、教具基準というべき性質のものである。発表・表示用教材、道具・実習用具教材、実験観察・体験用教材、情報記録用教材といった用語もあるが、この場合の教材は、一般的理解にしたがえば教具である。
このように「教材」と「教具」について概念上の齟齬(そご)がある。また、学校現場の実践発表などを聞いていると、内容と教材との概念的区別もなされていないことが多いように思われる。
以上のような点についてきちんと整理をしなくてはならないが、ここで提起したいことは、物的手段としての教具の教材化である。教具自体を教材とすることも重要ではないだろうか。たとえば、コンピュータは教材を教授・学習するための手段として使われているが、コンピュータそのものについて、各教科などのなかで教えるということも重要ではないかということである。理科の場合であれば、コンピュータの機械としての特性などについて、社会科であれば、情報手段の歴史的変遷を指導したり考えさせたりすることができるであろう。また、道徳などの授業で、コンピュータやケータイが人間関係にどのような影響を及ぼしているかといったことについて自分たちの問題として考えさせることも重要であろう。
〜図書教材新報vol.64(平成22年9月発行)巻頭言より〜