vol.76

再出発には「夢」を力に
社団法人日本図書教材協会副会長
川野辺 敏

激動の時代である。政治・経済・社会のあらゆる場面で変動が続いている。3月11日の大震災・原発被害がそれに追い討ちをかけ、人々の生活や心の状態に計り知れない変化が生じている。教育もその渦中にある。日本人のよき伝統が見直され、一面ほっとしながらも、国際化・情報化の流れの中で、従来の学力・知識が問い直され、また、既存の教科では覆い切れない、国際・環境・福祉・情報など横断的ともいえる課題への対応が浮上している。このような変化の中で、われわれ教材作成者側もその長い伝統と経験を生かしながら対応してきたが、それだけでは耐えられない時代に入ってきた気がする。国は「確かな学力」に加えて「活用のための知識技能」を大きな目標にすえ、変化に対応できる「思考力・判断力・表現力」の育成を求めている。さらに、教材の種類としても「デジタル教材」を取り上げ、その活用を試みている。図書教材作成者にとっては重い課題である。

そんな折、身近なところでは法人改革の一環として本協会自体の改革も進行中である。これら難題を切り開き、前進するためには、言うまでもなく会員の皆さんの力の結集、図書教材の長所の検証・再発見、将来の展開に当たっての柔軟な対応、などを期待したいところであるが、この際、教材の「活用法」という面からも新しい展開を考えていく必要があるのではと感じている。今後、複雑・多様化するであろう教材を使いこなすことが大きな課題となるはずである。よい教材も「教師の活用如何」によって、殆ど意味のない教材になりかねない。そこで、夢は「教材活用モデル学校あるいは協力校」の設置である。各社が作成した教材を活用して、質の高い授業を行い、結果として優れた人材を育てる。活用法を含めた教材を各校に配布する。―苦しい時には夢が力になる。

〜図書教材新報vol.76(平成23年8月発行)巻頭言より〜