vol.77

望まれる教科横断の教材開発
社団法人日本図書教材協会理事
上越教育大学名誉教授
新井 郁男

新学習指導要領を提言した中教審答申では、「社会の変化への対応の観点から教科等を横断して改善すべき事項」として、七つの視点が示された。しかし、主たる教材としての教科書には、こうした視点が十分に反映されているとは思われない。したがって、教科書とは別に、教科等を横断する教材の開発に一層の努力が望まれる。

「情報教育」については、情報モラル等にかかわる指導の充実を図るためには、ネットワーク上のルールやマナー、危険回避、プライバシー、人権侵害などについて指導するための教材が必要であろう。

「環境教育」に関しては、体験活動の重要性が指摘されているが、「科学技術と人間」、「自然と人間」という視点にたった教材が求められる。

「ものづくり」については、読書活動が取り上げられているので、伝統工芸などを支えてきた人々の生き方などを知ることができる教材を開発して図書室に配架する必要があるであろう。

「キャリア教育」については、小学校でどうすべきかについては明確に示されていないので、それについての教材開発が期待される。また、職業を中心に提言されているが、キャリアとしてはボランティア学習にかかわる教材も重要ではないだろうか。

「食育」については、学校給食を教材とすることが重要とされているが、どのように給食を教材化するのかがわかるような教材が必要であろう。

「安全教育」については、安全に関する法令や情報について、学校・家庭・地域が共有できる教材が重要であろう。

「心身の成長発達についての正しい理解」については、「心」と「身」との関係についての教材が重要ではないだろうか。

〜図書教材新報vol.77(平成23年9月発行)巻頭言より〜