vol.82
- 一般社団法人全国図書教材協議会会長
- 上越教育大学名誉教授
- 佐野 金吾
改訂された学習指導要領による教育活動は小学校では今年度から、中学校も来年度から全面実施となる。各教科の指導では教科書が主たる教材として使用されているが、その教科書が従前とは質的にすっかり変容している。
教科書に関しては「教科書の改善について(通知)」(文部科学省初等中等教育局長平成21年3月30日)において、従前の教科書観の転換を関係者に求めている。通知では、教科書は「個々の児童生徒の理解の程度に応じた指導の充実」を図るもので、「興味関心を持って読み進められる」ものであり、「家庭でも主体的に自学自習できる」ものであるとしている。学校関係者にとっては大きな変革ととらえられる。
新しい教科書は、振り返り学習や発展的な学習、主体的に学習に取り組む課題などによって構成されており、さらに学力の3要素に対応した学び方や表現の仕方までも丁寧に扱われている。従来は図書教材として扱われていたドリルやワークなどの教材が教科書の本文となっている。このような教科書を活用することで授業の在り方にも影響し、ワークなどによる児童生徒の主体的な学習活動を重視した学習形態が多く見られるようになった。
教科書が変容し、授業の流れが変わったことに対して図書教材はどう対応しているだろうか。
図書教材は児童生徒の学びをより豊かにしたり、授業の質を高めたりする上で重要な役割を果たしてきたし、その機能は今後も変わることはない。
このたびの学習指導要領改訂の視点を学力に当ててみると従来にはない大きな変革としてとらえられる。
児童生徒の学びあう学習をより豊かにし、「確かな学力」を育むため、教科書の変容に鋭く対応した図書教材の一層の工夫改善を願っている。
〜図書教材新報vol.82(平成24年2月発行)巻頭言より〜