vol.85
- OECDからみた「日本の教育
- 社団法人日本図書教材協会会長
- 菱村 幸彦
わが国では、学校教育に対する批判が絶えない。橋下徹大阪市長による「バカ文科省」「クソ教育委員会」という雑言に代表される学校バッシングはその典型例であろう。
わが国では、学校教育に対する批判が絶えない。橋下徹大阪市長による「バカ文科省」「クソ教育委員会」という雑言に代表される学校バッシングはその典型例であろう。
ところが、諸外国では、日本の学校教育を素晴らしいと称賛する声が少なくないのだ。例えば、昨年、OECD(経済協力開発機構)がPISA調査を基に作成した報告書(注)を公刊したが、その中でわざわざ一章を設けて、日本教育の卓越性について解説している。
その章は「国際的な教育の比較調査が始まって以来、日本は、国際的順位のトップか、その近くに居続けている」という叙述で始まり、卓越性を持続する日本の教育システムの特徴について、@標準化された要求の厳しい教育課程基準が整っていること 、A生徒のやる気を重視する教授方法がとられていること、B学校と家庭のコミュニケーションが図られていること、C長い授業時間が確保されていること、D教員の質が高いこと、E的を絞った財源配分が行われていること等を挙げている。
なかでも、日本の教員について「日本の教育の成功は、第一級の教師を手にしていることにある」として、その理由をこう説明している。 近代学校制度が始まったとき、教員のほとんどは武士階級出身で名誉ある職とされてきた。日本では教員は尊敬され、給与も公務員の中で高く位置付けられている。初任者に1年間の研修プログラムが提供され、教員研修では授業研究が重視される――等々。
われわれは、とかくメディアがセンセーショナルに報じる学校教育の欠点に目を奪われがちになるが、日本の学校教育の卓越性にもっと目を向けるべきではないのか。国際的に高く評価される教育を実践している日本の教師の努力に拍手を贈りたいと思う。
(注)Strong Performers and Successful Reformers in Education(2011)。日本語版『PISAから見る、できる国・頑張る国』(明石書店)
〜図書教材新報vol.85(平成24年5月発行)巻頭言より〜