vol.87

言語活動の充実と図書教材
一般社団法人 全国図書教材協議会会長
佐野 金吾

図書教材を上手に活用している授業では、児童生徒は学習活動に意欲的に取り組み、充実した学習活動が行われている。図書教材は、授業を成り立たせる上で教師にとっても児童生徒にとっても大きな役割を果たしている。

言語活動は知的活動(論理や思考)の基盤であり、コミュニケーションや感性・情緒の基盤でもあって、豊かな心を育む上でも重要であることから、このたびの学習指導要領の改訂に当たっては、言語活動の充実が各教科等を貫く重要な改善点となっている。学習指導要領では国語科で培った言語活動に関する能力を基本にして、すべての教科において充実した言語活動が行われることを期待し、各教科の特性に応じた言語活動例も示している。どの教科においても言語活動の充実を図る学習指導をいかに成り立たせるかが学校経営の大きな課題である。これからの図書教材には、こうした学校の取り組みに対する支援の一端を担うことも求められるのではなかろうか。

すでに学校で使用されている図書教材の何点かについて、各教科の特性を生かした言語活動を促す教材となっているか点検してみたが、残念ながら学習指導要領に示す趣旨が十分に反映されているか疑問を感じるものもあった。

学校からのニーズに応じた図書教材を提供することは、全図協としての重要な任務ではあるが、今後の学校教育の動向を見据えると、これからの厳しい社会を生き抜く児童生徒の成長と学力を保障する図書教材とともに、学校の教育活動全体の充実を視野に入れた図書教材の提供も考慮することが必要となる。

〜図書教材新報vol.87(平成24年7月発行)巻頭言より〜